<言葉>
海外を旅行する上で一つの障害が言葉です。中国は日本と同じように漢字を使っているのだから何とかなるだろう、と思っている人もいるかもしれませんが、そうもいかないことが多いので注意してください。
中国語の前に、まず英語の話。中国では英語はまず通じないものと思ってください。若い世代には英語をそれなりに話せる人もいますが(ちゃんとした英語教育を受けていない人の発音はひどくてとても聞き取れないですが、一方かなり流暢に英語をしゃべる人も少なからずいます)、肝心なシーンでは英語はまず頼りにならないものと思ってください。英語が役に立つのはせいぜいホテルの中くらいで、食事や鉄道、バスのチケット購入、買い物ではまずまったく役に立ちません。(といってもこれはあくまでも私の印象です。中国国内では私は常に中国語を使っていて、英語を使ったことは無いので、もしかしたら実は結構役に立つかもしれません)
まず大前提として日本語と中国語の漢字には若干の違いがあるということを覚えておいてください。語と语、約と约のようにちょっとした違いの場合もあれば、車と车、極と极のようにだいぶ違うものもあります。また電車が火车で自動車が汽车というように意味が変わるものもあります。なので「同じだから理解できる」という過大な期待はしないで、「たまにわかることもある」「ヒントくらいにはなる」という程度に考えてください。
で、コミュニケーションを取る上で漢字が役に立つ、つまり筆談が役に立つかというと、これも「無いよりはマシ」程度と思った方が良いと思います。まず、こちらが漢字を書いて相手に提示した場合ですが、日本の漢字を使っても中国人はほとんど理解できるはずです。逆に中国人に返事を書いてもらった場合、それを理解するのは相当困難ではないかと思います。なので「こちらの意志を相手に伝える」程度に役に立つものと思ってください。
もう一つ注意すべき点ですが、一番筆談を使いたいシチュエーションである交通機関のチケットの購入時にはあまり役に立ちません。中国人は元来商売熱心な民族で、普通のお店で買い物をするときとか食事をするときなどは、相手もおそらく筆談にも対応して交流しようと一生懸命努力してくれるはずです。ところが、鉄道やバスなどの窓口業務はいまだに社会主義時代の(まあ今も一応そういう建前になっていますが)悪習が残っているのか対応がひどく横柄で、面倒がって筆談に応じてくれないことが多いと思います。鉄道のチケット購入の項で説明しましたが、列車を指定するくらいは紙で書いたものでOKなのですが、もしそれが無かった場合などは口で言うだけ言って、こちらが理解できないと見ると「うっとうしいから帰れ」みたいな対応をされるのではないかと思います。ということで、筆談に関しては「たまに役に立つかも」くらいに考えた方が良いと思います。
中国旅行は中国語を勉強するまたとないチャンスです。学んだ中国語を活かす機会はいくらでも転がっています。タクシーに乗ったときは助手席に座って運ちゃんと話をしましょう。列車に乗ったときは近くの人と話をしましょう。「你是哪里的(どこの人?)」という中国人がよく使う挨拶をしてください。こちらが日本人で中国語をしゃべれると知ると必ず食いついてきます。あとは手持ちの食料(果物とか瓜子とか)を出して一緒に食べながら話をすれば、会話の良い経験になります。ユースホステルなんかだと自分の旅行経験や写真を自慢したい中国人がいくらでもいるので、「你是哪里的」から始めて「これからどこ行くの?」とか「どこどこは行ったことある?」とか聞けばいくらでも会話が続きます(中国人の旅行の目的は、半分以上が「他人に自慢するため」なんじゃないかと思うくらい、喜んで自分の話をします)。