シベリア横断鉄道
その一 2/6〜2/8
2/6 19:40 | Екатеринославкаエカチェリーノスラブカ駅到着 |
何とかブルグ駅に到着。外に出てみたらハンパじゃなく寒い。三分くらい外にいただけでもう体の芯が冷えてしまった感じがする。まあ足はサンダル、上はTシャツとジャンパーという格好だから当然、というのもあるか。
この駅では何やらパトロールの警官も来た。パスポートと電車のチケット、あとなぜかバウチャーを見せろ、と要求された。バウチャー見て何がわかるんだ?なんだかトラブルの危険を感じたが、特に何も言われなかった。
今日の事をざっと。今日は一日二日酔い気味で気持ちが悪い。トニー(仮称)は俺が寝ている間に下りていったらしい。俺は列車内でお茶を飲んだり、セルゲイとよくわからんロシア語の話をしたり。ちょっとでも基礎があれば良い勉強になるんだけど、キリル文字の読み方すらわからんからなあ。
昼過ぎからお互いに(二人である)食料を出して適当に食べる。あまり食欲が無い。そのうちセルゲイが「ビールの金」と言ってくるので、昨日飲んだビール代(覚えてないんだけど車内販売で5,6本買ったみたい)の請求かと思って100ルーブル渡したら、二本新しく買ってきやがった。ちょっと飲むけど半分くらいで気持ち悪くなってセルゲイに渡す。どうもセルゲイは現金を持っていないみたいで、「普通はカードで買えるんだけどこの列車では使えないんだ。ルーブルくれ」との事。俺が飲む気しないので出し渋ったんだけど、必死で懇願してくるので仕方なく、全部で200ルーブル、ビール5本分おごる。「パジャールスタ」お願いだから、を連発してきた。アル中か、お前は。
今日はそんなところ。しばらくビールは控えよう。明日はポールさんを探しに行くかな。
2/7 17:02 | Архараアルハラ駅を過ぎたあたり |
列車は夕陽に向かって西に走る。
セルゲイがしきりに「サーラクーシュェイ」とサーラ(サーロ?)を勧めてくる。サーラはおいしいとは思うけど、一切れで結構胃にもたれるので、あまりたくさん食えない。それにしてもこの男は一日中ビールを飲んでいる。朝起きたら前日夜の飲みかけのビール、飲み終わったらしばらくして2、3本買って来て、の繰り返し。俺は一日目でもう十分飲んだのでしばらくは見てるだけにする。
トイレの話。この列車はもちろん洋式なんだけど、終わったらペダルを踏むと便器の底の蓋が開いて下(もちろん線路)に落ちる仕組みになっている。穴から線路が見えて、線路に直滑降の中国の列車に比べてかなりハイテクである。
・・・トイレの話を書いていたら、トイレがらみの問題が・・・今駅(おそらくЗиловоズィローヴォ駅に停まってたんだけど、セルゲイがトイレに行けないもので(遠路にモノが落ちるので駅に停車中はトイレが閉鎖される)、コンパートメントの中でビールのボトルに用を足してたんだけど、なんと俺のサンダルの上にこぼしやがった。この酔っぱらいめ。
トイレの話に戻る。ロシアの列車のトイレはかなり高度な技術が使われているなあ、と考えてみると、普段は蓋しとかないと寒くて使えないんだということに気がついた。開きっぱなしで座っていたら、夜なんかはケツが凍るかもしれない。確かに窓枠は凍ってるし、ペダルを踏むと下から冷気の煙がぱっと上がってくるからなあ。
あと、駅につくと外からガンガン何かを叩く音が響いてくるので、ボルトのゆるみの検査でもしてるのかと思ったら、トイレのパイプを叩いて凍り付いた排泄物を除去している音だった。なるほどいろいろな苦労、工夫があるものだ。
メモ。ロシア人は酒を表現するのに、のどの右横を右手人差し指ではじくジェスチャーをする。列車に乗ってから何度このアピールをされたことか。
酒といえば昨晩、12時過ぎにセルゲイともう一人のロシア人に起こされる。彼の身分証を見せてくるんだけど、そんなもの見ても何だかわからないので「ハァ?」という顔をしていたら、ФСВでポリスだという。KGBなら怖いけどФСВなんて聞いた事無いし、第一どう見ても非番じゃねーか。まあ言われた通りにパスポートとチケットを見せる。名前を読み上げて「OK」、トウキョウ「OK」、なにがOKだよ。で次に何かと思ったらのどをはじいて「マニーマニー」。テメーも金持ってないのかよ。
向こうは警察の威厳で金を出してもらおうと思ったのかしらないけど、こちらが頑強に「ノーマネー」で抵抗してたら、最後には「ノボシビルスク(→)で金を下ろせるからそこで返す。パジャールスタ」と戦法を変えてきた。もういい加減鬱陶しくなってきたが、あと210ルーブリしか無いことをしっかりアピールして(本当はあと6000ルーブリあるけど)、100ルーブリ渡す。返ってくるとは思っていないが、400ルーブリ渡したとしてもせいぜい1700円くらいなのでまあ良かろう。で、案の定、今朝あと100ルーブリ渡して残り10ルーブリである。ただ彼らもどこから調達してくるのか、俺が渡した以上のビールを買ってきて飲んでいる。少なくともセルゲイは本当に金を持っていなさそうなのだが、別の人にも借りてきているのかな?だとしたら本格的にアル中である。
さっきカレンダーを見たらモスクワまであと四日。長い・・・
列車はバイカル湖畔を通過中。バイカル湖(→)を右手にずっと南下している。湖は一面の白、銀世界。セルゲイが教えてくれなかったら湖だとはわからなかったと思う。しばらく窓に貼り付いて見ていたが、所々に集落があり、鳥が飛んでいたり、人が歩いていたり、車が走っていたり。よくこんなところに住めるものだ。
まずは昨晩の惨事について記しておく。昨晩はどういうわけだかセルゲイがべろべろに酔っぱらって大変だった。ビールのプルタブも開けることができないくらいに泥酔していた。俺がいくら寝ろといっても聞かず、結局最後の一本までビールを飲んで(プルタブを開けられず壊してしまったので、俺がナイフで穴を開けてやった。もし放っておいたら缶を破壊して部屋中ビール浸しにしていたかもしれない)ようやく就寝。までは良いのだが、その後例によって部屋の中でトイレタイムを始める。今日は停車中じゃないのでトイレを使えたはずだが、間に合わないと判断したらしい。あるいはトイレまでたどり着けないと考えたのか。でも今日は完全に泥酔しているので、ボトルにうまく入らず大半は床へ・・・。本人の名誉のためにそれ以上は書かないが、結局俺が後始末をせざるをえず、もう大変だった。西安といいここといい、ルームメイト運があまり良くないらしい。まあ吐かなかったのが不幸中の幸いかな。普段は本当に良いやつなんだけどなあ。
次。ФСВの兄ちゃん。元々別のコンパートメントなんだけど、ここに入り浸っている。昨日俺がiPodで何かを聞いていたら「貸してくれ」というのでしばらく貸してやったのだが、メタリカとエミネムをかなりの大音量で繰り返し聞いてたみたい。何そのイメージ通りの選曲・・・
あと昨晩セルゲイが寝たあと彼がこの部屋で食事を始めたのだが、セルゲイの缶詰を開けて俺のパンを食って俺のお茶を飲んで・・・。こういう列車の旅ではお互いの食料を出し合って勝手に食べ合うものなんだけど、お前は人のもの食ってばっかじゃねーか。おまけにビール代まで無心してくるし・・・(まあ全部出したあとはさすがに何も言ってこなくなったけど)。彼も別に悪い人物じゃないけど、ちょっと図々し過ぎ。
最後に列車の旅の印象。まず食料。持ち込んだ食料の量は十分なのだが、一つ重大な忘れ物があった。「果物」。今日気がついたのだが、ここ数日全く野菜を食べていない。肉、魚、パン、乳製品、麺、お茶。リンゴの何個かくらいは買っておくべきだった。モスクワで野菜ジュースでも飲むか。
あと車内販売は基本的に無い。ビールや水は乗務員のおばちゃんに直接頼みにいくらしい。あとは一度新聞売りが来たくらい。食料の補充が必要になったら駅で列車を下りて売店に買いに行く必要がある。後二日めのОблучьеオブルーチュー駅では屋台がいくつか出て、ピロシキやサラダなんかを売っていたのだが、見たのはその一度きりで、他の駅では屋台は基本的に無い。
あと基本的なことだが、中国と同様お湯は自由に使えるので、その点はすごく便利。お茶とカップラーメンは必需品である。
駅。寒い。ハンパじゃない。この内陸部に比べたらウラジオストックははっきり言って全然寒くない。十分くらい外にいると足の親指が痛くなってくる。まあ厚手の靴下にサンダルという格好だから当然かもしれないが。あと本当に鼻水が凍る。しばらく外にいると鼻の中が突っ張ってくるのを感じるのだが、たぶん鼻水が凍っているんだと思う。さすがに鼻からつららが垂れるわけではないが、すごいところである。しかしこんなところにも結構人が住んでいるというのがもっとすごい。
ちなみに列車の中は十分に温かくて、基本的にはTシャツ、ジーパン、裸足でOK。昼間はそれでも暑過ぎると感じることがしばしばである。夜も毛布一枚で寝ている。セルゲイは何もかけてない。ただし明け方は結構冷えて、毛布一枚では肩口がちょっと寒いのでジャンパーをかけて寝ている。あと窓は当然二重窓なのだが、窓枠は夜凍り付いて昼溶けるというサイクルを繰り返している。冷蔵庫代わりにバターやチーズを窓枠に置いているのだが、冷蔵庫というよりはむしろ冷凍庫である。朝見たらチーズがカチカチに凍り付いている。当然窓の近くは冷気があるのだが、カーテンを二枚かけるだけでほとんど冷気は感じられなくなる。昼、暑い時は窓に頭を持たせると頭が冷えて気持ちが良い。
ついでに鉄道のこと。少し意外なことにすれ違う列車は結構多い。多くは貨物車であるが。もっと意外なことに四日目の今日に入っても列車は正確に時刻通りに運行している。こんな途方も無い雪原を走っているのに。すごい。
2/8 19:57 | Иркутскイルクーツク駅到着 |
イルクーツク(→)到着。というか今出発。列車を下りて歩いていたらポールさんとばったり出くわす。しばらく立ち話をする。今朝食堂車に行ってみたんだけど、お前信じられるか?朝食に15ドル(300ルーブル)もとられちまったぜガッデム、お前のインスタントヌードルのサジェスチョンで助かったぜMan、だって(すみません、かなり誇張してますが)。ウラジオストックで会ったとき、俺がカップラーメンをいっぱい持ってると言ったら、それはgood ideaだ、俺も買ってこよう、といっぱい買って来ていたのだが、それがずいぶん役に立ったらしい。それはなによりで。
ちなみに俺は気がつかなかったんだけど、今朝下りた駅は気温が-17℃だったとのこと。今は-6℃でそんなに寒くないな、だって。そういえば鼻水が凍らなかったなあ。
ポールさんがらみでもう一つ。彼はブラックベリーを持っているのだが、こんなところでも使えてびっくりしたぜ、とのこと。イルクーツクに着く手前で奥さんと電話したらしい。まあイルクーツクは大きな街だから電波あるだろうけど、アメリカから持って来た携帯をそのまま使えるというのは本当うらやましい。携帯鎖国で日本の消費者はかなりの不利益を被っているんだよなあ。よく日本の携帯は世界一進んでいる、と自慢する声を聞くけど、そういう面では世界一劣っているとも言えると思う。海外行ってみないと気がつかないけど、本当に腹立たしい。
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