6月

6/2 アリゾナドリーム →Amazon
なかなか エミール・クストリッツァ
アンダーグラウンド』『黒猫白猫』が結構似た感じの映画だったので、
そういう映画を撮る監督なんだと思っていたら、
全然違う雰囲気だったので驚いてしまいました。
『アンダーグラウンド』のあふれんばかりのパワーはなくて、
すごく落ち着いた静かな雰囲気の映画で。
まあ何とも不思議な感覚は通じるものがあるとは思いますが。
内容的にはあとからじわーと来るような、なかなか良い映画だと思います。
見ていて驚きがあるわけではなく、
なんかストーリー的にも分かりにくいんですが、
思い返してみると、なんか良いなあと言う感じです。
俳優もかなり良いところが集まっているし。
面白いです。



6/2 アパートの鍵貸します →Amazon
さすが ビリー・ワイルダー
さすが名作といわれるだけのことはある、
と素直に思ってしまう映画。
しゃれたユーモアとペーソスにあふれた、実に良い映画です。
ビリー・ワイルダーってまだ二本目なんだけど、
すごくしゃれた映画を作る監督ですね。
昔はハリウッドでもこれだけウィットに富んだ
映画が作られていたのに・・・
なんで今はあんなどたばたコメディーばっかりに
なってしまったんでしょうか?
どたばたが悪いわけではありませんが、
そればっかりだとイヤになってしまいます。
たまにはこういう映画も見ないと。



6/2 シークレットサービス →Amazon
・・・ ウォルフガング・ペーターゼン
ウォルフガング・ペーターゼンって娯楽映画を作るのが
本当にうまいなあと思うんですが、
これはちょっと・・・
なんとなく初めから気が乗れないと言うか
集中できなかったです。
全体的にどうもメリハリがないような感じ。
クリント・イーストウッドも『許されざる者』と
同じような役柄だし、
ジョン・マルコビッチも何考えているのかさっぱりわからないし
(なぜフランクをターゲットにしたの?)
レネ・ルッソは中途半端だし。
いまいちかなあ。



6/3 メトロポリス 
どうにも りんたろう
大友克洋ファンは納得かもしれないけど、
手塚治虫ファンには「なんだこりゃ?」と言った感じの映画。
あの『メトロポリス』を下敷きにしているんだろうけど、
全然ストーリー展開が違う。
なんでそうなるんだ?
良い悪いは別にして包含するメッセージが全然違ってしまっていると思います。
(正直言えばかなりおかしい)
オリジナルのラストでミッチイが「自分自身の力で」
メトロポリスを破壊していくのと、
映画みたいにティマに「責任はない」ような形で
破壊されるのとでは全然雰囲気が変わってしまうんです。
まあ原作が厳しすぎるので(俺はそうは思わないけど)、
一般受けするようにアレンジしたのかもしれないですが。
ついでにいえば原作を踏み越えて手塚キャラを動員したのも
なんかいやらしい感じがしました。
ペロなんて「どっかで見たなあ?」と思ったら、
ホットドッグ兵団のペロだし、
逆に掃除ロボットは何かと思ったらあれがフイフイだし。
(ちなみに「地下の住民の蜂起」って『火の鳥 太陽編』から?)
まあそんな些末な話はともかく、
話の中核まで大きく変えられているのは理解できません。
見て損はないと思いますけど。
たぶん「手塚治虫なんて見たことも聞いたこともない」
っていう人のほうがちゃんとした評価ができるんでしょう。
(不幸な人だと同情しますが)
他にもいくつかあるんだけれども機会があったら別の場所で。



6/9 紅夢 
おすすめ チャン・イーモウ
面白かったです。
菊豆』でも書いたけど、チャン・イーモウというと
どうしても一抹の不安が漂ってしまうんだけど、
面白かったです。
さすがに世界的な監督といわれるだけのことはあります。
これはチャン・イーモウ-コン・リー作品の中でも
「(女の)情念」というのが特に色濃く描かれていて、
こわいくらいでした。
おすすめ。



6/9 戦争のあとの美しい夕べ 
・・・ リティー・パニュ
「カンボジア映画」という意味で見る価値はあるかと思うけど、
内容的にはちょっと・・・
力が入り過ぎちゃってるなあという感じです。
監督の意気込みが空回りしているというか。
カンボジアの現状とかドラマとかいろんなことを描こうとしすぎて、
中途半端になってしまっているというか。
それにしてもところどころにでてくる田園の風景。
本当にきれいです。
最初にでてくる緑の中を列車がすすむシーンとか。
これだけきれいな国が長年の戦争で苦しめられていたというのは・・・
本当に悲しいことだと思います。



6/10 マイライフアズアドッグ →Amazon
おすすめ ラッセ・ハルストルム
前々から評判は聞いていたけれども、
本当に良い映画。
期待を裏切らない出来です。
ストーリーとしてはさほど大きなドラマがあるわけではないんだけど、
何とも良いです。
感動して涙を流すとか、大笑いするとかそういうのはないんだけどね。
そういうなんというかハリウッド的脳天気さがないところが良いのかなあ。
とにかくおすすめです。



6/10 初恋のきた道 →Amazon
なかなか チャン・イーモウ
いろんな所で同じようにいわれているんだけど、
ぱっと見た映画の感じは本当に、
「アイドル映画」。
イヤー、かわいいです。
かわいい。
ただ全体としての作りもしっかりしているっていうのは
さすがだなあと感心してしまいました。
回想シーンの途中のへんは結構平凡な感じがしたんだけど
(町に探しに行くのかと思った)、
最後にしっかりまとめてます。
ラストは結構感動してしまいました。
菊豆』のような迫力(葬式のシーンとか)はないんだけど、
(『秋菊の物語』から路線が変わった?)
うまいもんです。
さすがにすごい監督です。



6/15 マーズアタック! →Amazon
おすすめ ティム・バートン
さすが、「らしい」映画です。
なんか随所にいろいろな映画のパロディ
(そうたくさん映画を見ているわけではないのでどこがどうとは言えないんだけど)
みたいなシーンがあるし、
UFO来襲のシーンはまるで『エド・ウッド』だし、
火星人のふざけっぷりもばかばかしいし。
見ていて楽しいですね。
それ以上でもそれ以下でもない、気楽な良い映画。



6/16 ロゼッタ →Amazon
・・・ リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ
見ていてこっちの方が苦しくなってくるような、
そんな映画。
つらいです。
これはロゼッタの物語であると同時に、
見ている自分自身の物語なのかなあと思ってしまいました。
だからこそつらいのかな、と。
非常に厳しい、そして考えさせられる映画です。



6/16 マレーナ →Amazon
まあまあ ジュゼッペ・トルナトーレ
さすがジュゼッペ・トルナトーレといった感じの映画。
ニュー・シネマ・パラダイス』にはちょっとおよばないけれど、
なかなか切ない、良い映画でした。
こういう哀切感というか、ペーソスを描かしたら本当にうまいですね。
ところで「誰でも持っている少年時代の記憶」と
「イタリア人てやっぱりこんなのなのか」というところと、
ごちゃごちゃに入り交じっているのが結構おかしかったです。
やっぱりイタリア人ってこんなんだなって。



6/16 ブラッドシンプル →Amazon
まあまあ コーエン兄弟
ちょっとコーエン兄弟らしからぬ、もってまわったような筋立て。
さほど映像にも凝っていないし、というちょっと違和感のある映画かな。
ちょっとサスペンスタッチっぽい、
映画っぽい映画というか。
これはこれで面白いと思うけど、『バートン・フィンク』のような
強烈に記憶に残るようなインパクトはないかも。
ところでフランシス・マクドーマンドって
ファーゴ』の女警察署長のイメージがすごく強いんだけど、
意外にきれいな人なんでちょっとびっくりしました。



6/17 逆噴射家族 →Amazon
なかなか 石井聡互
ちょっと予想外に面白かった映画。
「さすが」と言って良いのか。
結構笑ってしまいました。
面白かったです。
あといろいろな小道具とかがいかにも7〜80年代ぽくって
考古学的な見地での面白さもあるかも。
そういえば今やハリウッドの女優となった工藤夕貴が
キンキン声でなかなかかわいらしかったです。



6/23 クイルズ →Amazon
まあまあ フィリップ・カウフマン
まあこれだけ良い俳優をそろえれば、
良い映画にはなるでしょう、という映画。
さすがに良い映画です。
ただ筋立てはちょっと荒すぎるというか、
単純すぎるのが気になりました。
マルキ・ド・サドという人はまともに考えると
ものすごい複雑な人で、こんな簡単に描くのはちょっとね、
という感じです。
元々舞台劇の映画かという事みたいだけど、
ストーリー的には大分割り引いてみないといけないんじゃないかな。
少なくとも、「伝記」ではないです。
注意。



6/23 A.I. →Amazon
評価せず スティーブン・スピルバーグ
酔った勢いでつい先行オールナイトを見に行ってしまったんですが・・・
途中若干寝てしまいました。
まあホンのちょっとなんで、筋ははっきりとわかってるんですが。
内容というと・・・「キューブリックの遺作」という
期待をして見てしまうと全然ダメです。
キューブリックの毒が全くないんですよね。
本当にいいお話(必ずしもほめ言葉じゃないですよ)。
一般受けしそうな。
「毒にも薬にもならない」映画です。
もう一回ちゃんと・・・見ないかな。



6/30 バリー・リンドン →Amazon
・・・ スタンリー・キューブリック
なにを見ればいいのかいまいち良くわからない映画。
長いことも手伝ってか映画のポイントがはっきりしないような。
いかにもキューブリックっぽいところは随所に見られるんですけど、
(映像とか、音楽なんかは)
全体としては、どうかなあという感じかな。



6/30 ミッション →Amazon
なかなか ローランド・ジョフィ
この監督はどうも話の持っていきかたは大したことはない、
というよりも下手なんじゃないかと思うんだけど、
テーマの良さがそれを十分に補って良い映画となる、
そんな映画が多いと思います。
この映画もそう。
今までこういったヨーロッパの歴史の闇の部分は、
ほとんど(特に映画においては)目にする、耳にすることはないので、
結構ショックが多かったかもしれません。
まあインディオの迫害については
インディアスの破壊についての簡潔な報告』でいろいろと語られているけど、
文字(特に数字)では、とてもそれを
現実と認識することができなかった覚えがあります。
それに対して、内容はどうであれこういう風に
映画で描かれると結構衝撃的なものがあります。
キリスト教に救いを求めているところが単純すぎるというか、
限界を感じてしまうんですが、
まあなかなか興味深い映画です。



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