「彼」・・・どんな祭りへの期待にも、完全に背を向けてしまった、この人生の整理棚から、あえて脱出をこころみた「彼」・・・もしかしたら、決して実現されることのない、永遠の祝祭日に向かって、旅立つつもりだったのではあるまいか。
 ある日、ふと、どこかの壁か電柱に貼られた、一枚のポスター−風雨にさらされ、色あせて、誰の目にもとまらなくなった、大祝祭日を告げる一枚の貼り紙−場所や日時の項が空白であることに、かえって希望をふくらませ、その予告だけの祭典を求めて、二度と振り返ることもなく・・・闇とネオンの下でしか、化粧をごまかせないような、夜毎の模擬祭典などとは違い、死によってしか終わることのない、永遠の祝日に向けて・・・もし、祭りの儀式に闇が欠かせないものなら、永劫に終わることのない、夜だけの世界・・・祭りの後の、疲労や、哀しみや、風に舞う紙屑などとは、いっさい縁のない、無限の演舞の輪の中へ・・・

- 安部公房 『燃え尽きた地図』より -

 

 

3/4  9:59pm     Hotel Jai Gangesにて

さて列車は10:40amくらいに(まあほぼ定刻といえるだろう)バラナーシーに到着。ガンガー<ガンジス川のこと>を越えるときは、みんな一斉に窓に注目し、両手をあわせて拝む人や、さい銭を投げ入れる人がいてとても印象的だった。駅の中からからんでくるリキシャーを振り払いながら(どこでもRs2とか無茶なことを言ってきた)外へ出ると暑さ、というより日差しがカルカッタよりもはげしく振り注いでいる。とりあえず駅の外へ出てオートリキシャーをつかまえると二人づれでゴードウリアまでやれといってもホテル名を言えと言ってくるのでボラれるかもしれないと思いつつホテルガンジスを指すとそこまでやってくれた。たしかに中級と呼べるくらい部屋は広く鏡台や机、ベランダまでありバスも広くてRs240とおそろしく安い。チェックインしてしばらくすると突然ファンがとまってしまったのでフロントに言うとしばらく電源の方を操作してそれでもだめとわかると部屋をチェンジすると言ってきた。三つの候補(バスタブあり、湯わかし機あり、ふつう)からお湯が使える部屋を選択。しばらくしてめしを食べようと外に出るとどうも道がおかしいのでホテルに戻ってくる。戻るとフロントの人が来て、観光案内のようなことを話し始めたので聞いていると自分たちがゴードウリヤーよりはるかに離れたところにいることがわかった。問題はリキシャーにだまされたのか?ということだがホテルの部屋自体は地球の歩き方とほぼ同じであるので「歩き方」の場所が間違っているのかもしれない。しかしいずれにせよガンガーから遠い(歩いて3〜40分はかかる)こと以外は部屋も値段も従業員の対応も申し分はないホテルである。 場所がわかったので歩いて歩いてダシャーシュワメードに行き昼食。ポテトパラタ、ラッシー、サムズアップ。パラタはやたら熱くて食べづらかった。味はいまいちか。サイクルリキシャーRs10で一度ホテルへ戻り、一人でゴードウリヤーへサイクルRs5でやってくる。自分はRs8で交渉したが、Rs10渡すとRs5のおつりが返ってきた。よくわからない。
ここからどんどんとダシャーシュワメードを歩いてガンガーへ。ボートが一杯浮いているただの広い河ではあるが、さすがに「聖なる河」へやってきたという感慨は感じた。そういえば列車がガンガーをわたるときも「やってきた」という感動を飛行機でマドラスに着いたときよりも強く感じた。
その後ヴィシュワナート寺院へ。人が三人並べば一杯という狭い路地がえんえんと続き両側にはぎっしりと店がならんでいる。ばたばたと軒先を猿が走ったりしている。そこを道なりに歩いていくと寺院は通らず小路から出てしまったので、もう一度戻ってわきに入ってみると寺院の前へと出ることができた。とはいうものの寺院にはヒンドゥー教徒しか入れないので外からちょっとながめて先へ進む。さらに小道を進むといつの間にか入口の横ら辺から出てきてしまった。まるで迷路である。
そこから河沿いに火葬場の間に刈るにカーガートへ。いくつもの火を見ていると(実際の火葬はしていないようだった)一人のインド人が寄ってきて火そう場の説明をはじめた。どうせ金を取るので立ち去ろうかとも思ったが、説明はなかなか面白かったので(火そう場では誰でも焼けるが五種類だけ焼かないものがあるなど)そのまま聞いていると、うしろの寺院?から黄色の布をかけられた死体がやってきた。説明によると黄色の布はOld Manである。火そうを始めるようなのでそれをながめながら説明を聞いていると、「後ろの建物はホスピスで自分はそこでボランティアをしている。ホスピスに寄付をしてくれ」と言いだした。まあ説明は面白くてまたためになったので、とりあえずRs20を渡す。さらに見ていると今度はそこは家族専用なのでどけと言われて移動しているうちに点火されてしまったので、6:20に木村と待ち合わせた場所へ。木村と合流しもう一度ダシャーシュワメードガートへ行くと、日の暮れた河岸で火をつけたろうそくと花でかざった皿を流すプージャーをやっていた。日本の灯ろう流しなどによく似ている。
もう一度マニカルニカーガートへ行ったあとダシャーシュワメードロード周辺で屋台を適当に食べ歩いて夕食にする。Rs2の三角のあげ物がおいしかった。あげぎょうざの大きいのみたいの。サイクルでRs10で交差点まで戻り途中でジャガイモの小さいのみたいなフルーツを買う。Sweetだそうだがホテルで食べるとどうにもダメ。食べるのは無理だった。明日はガンガーの日の出を見たいのでフロントで日の出の時刻を聞くと5:15amくらいにホテルを出ろというので明日は4:50amに起きることにした。明日は早いのでもう寝る。

ガンガー 聖なる川に朝陽が昇る。

 

追記  3/7 11:11 Hotel Jai Gangesにてバナーラス

バナーラスではやはり多くの人が降りたのだが、人々がみな手に手に水筒やらブリキ?のカンやらを持っていたのが印象的であった。みなガンガーの水を汲んで帰るのだろう。